一次解決率(FCR)とは?下がる原因と運用&システム連携による改善策を紹介
一次解決率(FCR)とは?下がる原因と運用&システム連携による改善策を紹介

一次解決率(FCR)について解説する記事のメインビジュアル

 

コンタクトセンター・コールセンターの運営では「一次解決率」が重要なKPIとして注目されています。しかし、一次解決の定義が現場ごとに異なったり、対応履歴や転送理由のデータが分断されていたりすることで、正しく計測できていないケースも少なくありません。
その結果、数値は出ていても改善につながらず、教育やスクリプトの見直しだけで対策が止まってしまうこともあります。
本記事では、一次解決率の基本的な考え方から、測定できない原因、そして「運用とシステム連携」で改善する進め方まで解説します。運用改善やKPI管理を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

一次解決率とは?

一次解決率(FCR:First Contact Resolution)とは、顧客からの問い合わせに対し、初回の応対で用件が完了した割合を示す指標です。コンタクトセンター・コールセンターでは、顧客体験の向上や運用効率の改善を測るKPIの一つとして広く使われています。

一次解決率の算出式

一次解決率は次の式で算出されます。

  一次解決率(%)=一次解決件数÷総問い合わせ件数×100 

 

つまり、顧客が再度問い合わせる必要がなくなり、1回の応対で問題が解決した件数の割合を示します。一次解決率が高いほど、顧客の手間が少なく、コンタクトセンター・コールセンター側の再対応コストも抑えられている状態といえるでしょう。

実務で迷いやすい「一次解決」の基準

実務では、「どこまでを一次解決とみなすか」で判断が分かれるケースが少なくありません。例えば次のようなポイントです。

  • 転送した場合は未解決扱いか

  • 折返しは未解決とみなすのか

  • 保留後、同一通話内で完結した場合は一次解決か

  • 事務処理が翌日になる場合はどう扱うのか

このような判断基準が現場ごとに異なると、同じ「一次解決率」でも意味が変わってしまいます。その結果、「数字は出ているが実態を表していない」という状態になり、KPIとして機能しなくなる恐れがあります。

そのため一次解決率を指標とするには、まず「どのケースを一次解決と判定するか」のルールを組織内で統一することが重要です。定義と判定ルールが揃って初めて、一次解決率は改善活動に使えるKPIとして機能します。

一次解決率が重要な理由:顧客体験・コスト・現場負荷を同時に改善

一次解決率が重要なKPIとされる理由は、単に問い合わせ対応の成果を示すだけではありません。顧客体験、運用コスト、現場負荷という3つの要素に同時に影響する指標であるためです。

顧客体験:たらい回しや説明の繰り返しが減る

顧客にとって最も大きなメリットは、問い合わせが一度で完結することによるストレスの軽減です。
例えば、問い合わせのたびに担当者が変わったり、同じ内容を何度も説明し直したりする状況は、顧客満足度を大きく下げる要因になります。転送や折返しが多いコンタクトセンター・コールセンターでは、顧客の不満が蓄積しやすく、二次クレームにつながる恐れもあります。
一次解決率が高いと、顧客は「この会社は対応が早い」という印象を持ちやすくなります。

運用コスト:転送・折返し・再対応の工数が減る

一次解決率は、コンタクトセンター・コールセンターの運用コストにも影響します。

問い合わせ対応が一度で完了せず、同じ案件に対して複数回の対応が発生すると、次のような工数が増えていきます。

  • 再入電への対応

  • 担当部署への転送

  • 折返し連絡の手配

  • 対応履歴の確認や引き継ぎ

 

これらはすべて、コンタクトセンター・コールセンターの対応時間と人員リソースを消費します。

一次解決率が上がれば、同じ問い合わせ件数でも対応回数が減るため、運用コストの削減につながります。結果として、センター全体の生産性も高まります。

現場負荷:未解決の持ち越しやエスカレーションが減る

一次解決率は、オペレーターや管理者の負荷にも影響します。
問い合わせが解決しないまま持ち越されると、対応履歴の確認や引き継ぎが増え、業務が複雑化します。また、判断が難しい案件が増えるほどエスカレーションも多くなり、SVや管理者の対応負荷が高まります。
一次解決率が高いコンタクトセンター・コールセンターでは、こうした未解決案件が減るため、対応フローがシンプルになります。結果として、オペレーターのストレス軽減や応対品質の安定にもつながります。

注意点|一次解決率は単独で追うと危険

一次解決率は重要な指標である一方、単独で追うと別の問題を招く可能性もあります。例えば、現場で次のような行動が起こることがあります。

  • 改善が“個人依存”になり、仕組化が進まない

  • 本来は調査すべき内容をその場で回答してしまう

  • エスカレーションを避けるために無理に自己解決しようとする

 

こうした対応は、短期的には一次解決率を改善しても、顧客満足度の低下や二次問い合わせの増加につながる恐れがあります。

そのため実務では、一次解決率だけでなく、顧客満足度や再入電率などの指標と組み合わせて評価することが重要です。複数の指標を合わせて見ることで、コンタクトセンター・コールセンターの運用状況をより正確に把握できます。

 

コンタクトセンター・コールセンターの代表的なKPIについては以下の記事が参考になります。

AHT(平均処理時間)とは?改善は運用×業務×システムで考える

コールセンターのASA(平均応答時間)とは?改善の考え方と注意点を解説 

一次解決率が“測れない”典型パターン5つ

コンタクトセンター・コールセンターでは、そもそも「一次解決率を正しく測れていない」ケースも少なくありません。データの取り方が曖昧なままでは、数値が実態を反映せず、改善の方向性も見えなくなります。

1|現場の自己申告がベースになっている

一次解決率を算出するための一次解決件数を、オペレーターの自己申告で記録しているセンターもあります。
例えば、応対終了後に「解決」「未解決」といったステータスをオペレーターが手入力し、その結果を集計して一次解決率を算出する方法です。
しかし、この方法では担当者ごとの判断基準に差が生まれやすく、同じ内容でも解決・未解決の判定が変わる可能性があります。また、忙しい現場では入力が省略されたり、形式的な入力になったりすることもあります。
その結果、一次解決件数そのものの信頼性が下がり、そこから算出される一次解決率も実態を正しく表さなくなってしまいます。数値が信用できないと、KPIとして活用することも難しくなります。

2|対応履歴が残らず、再入電や折返しの判定ができない

問い合わせ対応の履歴が十分に残っていないことも、一次解決率の計測を難しくする要因になります。
例えば、対応記録がオペレーターのメモに依存している場合、次の担当者が過去の対応状況を正確に把握できません。その結果、顧客が同じ内容で再度問い合わせた場合でも、再入電として正しく判定できないことがあります。

3|ツールごとにデータが分断されている

問い合わせ履歴が複数システムに分散している状態も多く見られます。例えば次のようなケースです。

  • 電話システムに通話履歴がある

  • CRMに顧客情報がある

  • 別ツールに対応メモが残る

 

このようにデータが分断されていると、再入電や折返し対応を正しく追跡することが難しくなります。結果として、一次解決件数や総入電件数の正確な母数を作れないという問題が生じます。

 

CRMを活用したコンタクトセンター・コールセンター運用については「コールセンター/コンタクトセンターにおけるCRM導入の効果と成功のポイント ― 顧客体験を高める仕組みとは」をご覧ください。

4|FAQや手順書が分散し、参照状況も把握できない

ナレッジが複数の場所に分散している場合、オペレーターは必要な情報を探すのに時間がかかります。
その結果、その場で回答できず、転送や折返し対応が発生するケースも増えていきます。また、ナレッジの参照ログが取得できない環境では、どの問い合わせで情報探索に時間がかかっているのかを把握することができません。
この状態では、一次解決率が低い原因を特定することも難しくなります。

5|転送理由が記録されず、改善ポイントが見えない

問い合わせが別部署へ転送される場合でも、その理由が記録されていないケースがあります。
例えば、専門知識が必要だったのか、権限不足だったのか、担当部署の振り分けが適切でなかったのかが分からなければ、改善策を検討することができません。
転送理由がデータとして残らない環境では、一次解決率が低い原因を特定できず、改善の優先順位も判断しにくくなります。

一次解決率を「測る」ための最短ルート

一次解決率を改善するには、まず「正しく測れる状態」を目指すことが重要です。ここでは、一次解決率を安定して計測するために実務で整理しておきたいポイントを紹介します。

1|一次解決の判定ルールを決める

最初に必要なのは「一次解決」の定義を明文化することです。例えば次のようなケースについて、組織として統一した判断基準を決めておきます。

  • 転送は一次解決に含めるのか

  • 折返し連絡は未解決扱いにするのか

  • 保留後の社内確認があっても一次解決とするのか

 

このようなルールを文章として整理し、現場全体で共有することで、一次解決率の定義が定着します。

2|未解決理由コードを設計する

次に「なぜ一次解決できなかったのか」を把握し、「未解決理由コード」として整理します。例えば次のような分類です。

  • 担当部署への転送

  • 調査のため折返し

  • 権限不足によるエスカレーション

  • 顧客情報の確認不足

 

未解決理由コードは最初から細かく設計する必要はありません。まずは粗い分類でもよいので記録を始め、運用しながら改善していくことが重要です。

3|データの所在を棚卸しする

一次解決率を計測するためのデータがどこにあるのかを整理します。コンタクトセンター・コールセンターでは、次のような情報が複数システムに分散している場合があります。

  • 通話履歴

  • 転送ログ

  • IVR選択履歴

  • 顧客情報

  • 対応履歴

  • FAQ参照履歴

 

これらを把握せずに改善に取り掛かると、必要なデータが揃わず、計測が途中で止まってしまうこともあります。まずはどのデータがどのシステムにあるのかを整理することが重要です。

4|一次解決件数を自己申告に依存しない設計にする

先述のとおり、一次解決率を計測する際、一次解決件数をオペレーターの自己申告で記録しているケースも少なくありません。しかし、この方法では担当者ごとの判断基準に差が生まれやすいだけでなく、データの精度が安定しないという問題も起こります。
そのため、一次解決率の計測では、できるだけ手入力に依存しない設計に寄せることが重要です。例えば、通話ログや転送履歴、対応ステータスなどがシステム上で自動的に記録されるようにしておくことで、一次解決件数の判定をより客観的に行えるようになります。

一次解決率改善の出発点は「定義とデータ設計」

改善の最初のステップは、「一次解決の定義の統一」と「計測できるデータ設計」です。計測の基盤が整うことで、初めて一次解決率を継続的に改善していくためのデータが揃います。

仕組みで一次解決率を上げる:連携・導線・ナレッジの改善パターン

一次解決率を安定して高めるには、現場の努力だけに依存せず、仕組みで解決できる部分を整備することが重要です。ここでは、代表的な改善パターンを紹介します。

パターン1:着信時に顧客情報と履歴を出す

一次解決率を高めるためには、問い合わせ内容を素早く理解できる環境を整えることが重要です。
例えば、着信時に発信者番号や契約番号をもとに顧客情報を自動表示する「スクリーンポップ」を導入すると、顧客の契約状況や過去の対応履歴をすぐに確認できます。
この仕組みがない場合、オペレーターは顧客情報を聞き取りながら手動で検索する必要があります。その結果、本人確認や状況把握に時間がかかり、調査や折返し対応が発生することもあります。
顧客情報と対応履歴を着信と同時に表示できる環境では、ヒアリング時間が短縮され、その場で回答できる可能性が高まります。

パターン2:対応履歴を統一フォーマットで記録する

一次解決率を正しく管理するためには、対応履歴が残る仕組みも欠かせません。例えば、応対結果や未解決理由、次のアクションなどを一定の形式で記録することで、対応内容を客観的に把握できるようになります。
対応履歴が統一されていない場合、担当者ごとに記録内容が異なり、再入電時に状況を正確に把握することが難しくなります。その結果、同じ説明を繰り返したり、不要な転送が発生したりすることもあります。
履歴が一貫した形式で残る環境では、一次解決かどうかをデータで判定できるようになり、一次解決率の計測と改善の両方を進めやすくなります。

パターン3:転送・エスカレーションを減らす導線設計

一次解決率を直接押し上げる方法の一つが、転送そのものを減らすことです。例えば、IVR(自動音声応答)やACD(着信呼自動分配装置)の設定を見直し、問い合わせ内容に応じて適切な担当者へつながるようにすると、不要な転送を減らすことができます。
また、オペレーターが判断に迷った際に、SVへチャットなどで即時相談できる環境を整えることも有効です。管理者がリアルタイムでサポートできれば、転送や折返しを行わずにその場で解決できるケースが増えます。
こうした導線設計の見直しによって、たらい回しや長時間の保留を減らし、一次解決につながる対応を増やすことができます。

パターン4:ナレッジを「探せる・使える」状態にする

問い合わせ対応では、必要な情報をすぐに見つけられるかどうかが一次解決率に大きく影響します。
FAQや手順書、対応マニュアルが複数の場所に分散している場合、オペレーターは情報探索に時間を費やすことになります。その結果、その場で回答できず、転送や折返し対応が発生することもあります。
そのため、ナレッジを一元管理し、検索しやすい環境を整えることが重要です。さらに、ナレッジの参照ログを取得できるようにすると、どの問い合わせで情報探索に時間がかかっているのかを把握できるようになります。
これにより、改善すべきナレッジやFAQを特定でき、対策を検討できるようになります。


ナレッジ活用を組織的に進める考え方については「コールセンターのナレッジマネジメントとは?成功のポイントを解説」をご覧ください。

パターン5:KPIデータを自動で可視化する

一次解決率の改善を継続するには、データを定期的に確認できる環境も重要です。例えば、次のようなデータをダッシュボードで可視化できると、改善の方向性を判断しやすくなります。

  • 未解決理由の分布

  • 転送理由の上位項目

  • 一次解決できた問い合わせの種類

  • 一次解決できなかった問い合わせの種類

 

こうした情報が可視化されていれば、管理者は感覚ではなくデータをもとに改善策を検討できます。また、月次集計だけでなく週次や日次で確認できる環境を整えることで、改善サイクルをより速く回すことが可能になります。

まずは小さく始めて、改善を積み上げる

ここまで紹介した施策は、すべてを一度に導入する必要はありません。
重要なのは、最もボトルネックになっている部分から改善を始めることです。例えば、顧客情報の参照に時間がかかっているのであればスクリーンポップから着手し、転送が多いのであればルーティング設計を見直すといった形です。
小さな改善から始めて成果を確認し、その結果をもとに次の施策へ広げていくことで、一次解決率の改善を段階的に進めることができます。
一次解決率の向上は、単なるツール導入ではなく、「定義 → 計測 → 可視化 → 改善」というサイクルを回す仕組みづくりによって実現します。

まとめ|一次解決率は「改善策」より先に「測れる仕組み」

一次解決率は、コンタクトセンター・コールセンターの運用状況を把握するうえで重要な指標です。しかし、一次解決の定義やデータの取得方法が曖昧なままでは、数値を出しても実態を正しく反映できません。
一次解決率改善の最初のステップは、施策の導入ではなく、正しく計測できる仕組みを整えることです。一次解決の判定ルールを明確にし、通話履歴や対応履歴、転送理由などのデータを取得できる環境を整えることで、一次解決率を把握できるようになります。
また、顧客情報の参照やナレッジ検索がスムーズな環境では、その場で回答できるケースが増え、転送や折返し対応の削減にもつながります。
一次解決率の改善は、現場の努力だけに依存するものではありません。定義・計測・可視化・改善の仕組みを整えることが、継続的な改善の鍵となります。

岩崎通信機が支援できること

一次解決率の改善を進める際、課題は企業ごとに異なります。岩崎通信機では、コンタクトセンター・コールセンターごとの課題に対して、現場の運用とシステムの両面から改善を支援しています。

例えば次のような取り組みです。

  • 一次解決率の定義策定と計測設計

  • 転送理由や未解決理由を可視化するボトルネック診断

  • CTI・CRM・FAQなどのシステム連携設計

  • 運用改善に向けた段階的な導入支援

 

一次解決率の改善は、一度に大きな変革を行う必要はありません。まずはボトルネックになっているポイントを一つ改善し、成果を確認しながら次の施策へ広げていく方法が現実的です。

 

岩崎通信機のシステム構築支援の詳細については、サービスページ「コンタクトセンター構築」をご覧ください。

 

 

【一次解決率を高めるには?】コンタクトセンターシステム刷新の実践ガイド

一次解決率を改善するには、顧客情報の参照、ナレッジ活用、転送ルールなどを含めた「仕組み」全体の見直しが重要です。しかし実際には、以下のような課題により、一次解決率の改善が進まないケースも少なくありません。
・顧客情報や対応履歴が複数システムに分散している
・転送や折返し対応が多く、原因を把握できない
・ナレッジが整備されておらず、その場で回答できない
本資料では、コンタクトセンターの運用改善を実現するためのシステム設計の考え方や刷新の進め方を解説しています。
一次解決率の改善につながる、顧客情報連携・ナレッジ活用・データ可視化などのポイントを整理し、コンタクトセンターの基盤をどのように見直すべきかを具体的に紹介します。

コンタクトセンターシステム刷新戦略ガイドのホワイトペーパーの表紙画像

 

この記事を書いた人

 

 

藤井直樹

コールセンター業界で20年以上SEとして従事。
アナログ時代から今に至るまで現場に近い場所で技術の移り変わりを経験。
公共、金融業界、BPO業界の経験が豊富。

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