コールセンターのナレッジマネジメントとは?成功のポイントを解説
コールセンターのナレッジマネジメントとは?成功のポイントを解説

ナレッジマネジメント_バナー画像

コールセンターでナレッジを蓄積しても、「現場で活用されない」「更新が滞る」といった問題に直面するケースは少なくありません。その原因は、ナレッジを業務フローの中でどう使い、どのシステムと連携させるかを十分に考慮しないまま仕組みが設計されているケースが多いためです。

本記事では、コールセンターにおけるナレッジマネジメントの基本から、ナレッジマネジメントが定着しない原因、システム連携による成功のポイントまでを分かりやすく解説します。

コールセンターにおけるナレッジマネジメント

一般にナレッジマネジメントとは、従業員個人の持つ知識や経験、ノウハウ(ナレッジ)を組織全体で共有・活用し、新たな価値創造や生産性向上、競争力強化を目指す手法を指します。

 

コールセンターにおける「ナレッジ」とは、どのオペレーターも同じ品質で応対するために必要な業務知識のことであり、その共有・活用を推進することがナレッジマネジメントとなります。

 

【ナレッジマネジメントが不十分だと起きる問題】

コールセンターでナレッジマネジメントが不十分な場合、応対品質のばらつきや属人化が発生し、結果として教育コストの増加を招く可能性があります。

コールセンターでナレッジマネジメントを行う3つのメリット

前章で整理したとおり、コールセンターのナレッジは「どのオペレーターが対応しても同じ品質で応対するために必要な業務知識」です。これが現場で“活用され、更新される状態”になってくると、応対品質・生産性・教育の各領域に効果が表れやすくなります。

メリット1|応対品質の均一化・一次解決率向上

ナレッジが効果的に活用されるようになると、オペレーターごとの判断や説明内容のばらつきを抑えることができます。応対のブレが減ることで、対応の漏れや誤りのリスクが下がり、一次解決率の向上にもつながります。

メリット2|新人育成期間の短縮

経験の浅いオペレーターや異動直後のオペレーターは、お客様情報やナレッジを検索する機会が多くなりがちです。その結果、必要な情報を探す時間が増え、応対時間が長くなる傾向にあります。検索を効率化できれば、応対がスムーズになり、OJT・教育工数の削減や早期戦力化が期待できます。

メリット3|ベテラン依存の解消、ESの向上

 

属人化が進むと、特定のオペレーターに相談や応対が集中し、負荷が偏ります。ナレッジが共有されていれば、判断の根拠が明確になり、オペレーターが自信をもって対応できるようになります。結果として、現場の負荷分散やES(Employee Satisfaction:従業員満足度)向上にもつながります。

ナレッジマネジメントのメリットを理解するうえで重要なことは、その効果を「コスト削減」だけで測らないということです。応対品質や教育のばらつきを抑え、問い合わせが増える時期や人員の入れ替えがあっても     運営を安定させるための「土台」として捉えることが重要です。

コールセンターにおけるナレッジマネジメントの課題と改善のポイント

多くのコールセンターが抱える課題は、ベテランオペレーターの経験や判断といった「暗黙知」を、誰もが使える「形式知」として体系化し、組織全体で共有可能な状態を構築することです。

「暗黙知」とは個人の頭の中にある経験則であり、「形式知」とはマニュアルやFAQなど共有可能な知識を指します。

【コールセンターの暗黙知・形式知の例】

暗黙知

ベテランの頭の中にある経験則

形式知

誰でも使えるマニュアル・FAQ

改善のポイントは「SECIモデル」にある

SECIモデルとは、個人が持つ経験や勘などの「暗黙知」を、マニュアル化・体系化可能な「形式知」へと変換し、組織全体で共有・創造していくためのフレームワークです。共同化(S)、表出化(E)、連結化(C)、内面化(I)という4つのプロセスを循環させることで、知識はスパイラル的に増幅され、組織全体のナレッジマネジメントが推進されると考えられています。

この考え方は、日々の問い合わせ対応の中で暗黙知が生まれやすいコールセンターにおいて、特に有効とされています。

 

SECIモデル

 


ナレッジは一度まとめて終わりにするのではなく、日々の応対を通じて継続的に更新・蓄積され続けることで初めて効果を発揮します。コールセンターでも、日常業務の中でナレッジ化が行われなければ、活用されなくなるでしょう。

コールセンターのナレッジマネジメントに重要なKCS

もう1つ、コールセンターのナレッジマネジメントにおいて重要な考え方が「KCS(Knowledge-Centered Service:ナレッジセンターサービス)」です。

KCSの基礎知識

KCSとは、コールセンターやカスタマーサポート業務で活用される、「ナレッジを捉え、構造化し、再利用し、改善する」という一連の流れです。

 

KCSがコールセンターと相性が良い理由

KCSでは、個別の問い合わせ対応をナレッジ更新の機会と捉えます。新しい質問や表現の揺れ、説明不足に気づいた時点でナレッジを修正・追加することで、知識を継続的に改善していくことが特徴です。

コールセンターは日々大量の問い合わせが発生するため、現場でナレッジを磨ける環境にあります。対応履歴や現場の気づきをそのままナレッジに反映しやすい点が特徴です。

 

KCSが失敗しやすい側面も

一方で、更新作業がオペレーターの負担となり、現場が忙しくなるほどナレッジ更新が止まってしまうケースも少なくありません。継続的にナレッジを更新しやすい仕組みでなければ、KCSは形骸化しやすい点に注意が必要です。

 

ナレッジマネジメントのよくある失敗パターン

コールセンターのナレッジマネジメントがうまく機能しないケースでは、現場でナレッジが十分に活用されていないと捉えられがちです。しかし実際には、ナレッジの活用以前に「実運用の中での活用を考慮していない」ことが問題である場合が多いものです。

探しにくい/更新されない/最新か分からない

ナレッジがどこにあるのか分かりづらかったり、情報が古いまま更新されていなかったりすると、次第に参照されなくなります。「正しいかどうか判断できない」状態もまた、利用が進まない要因となります。

ナレッジの管理が“別作業”になっている


問い合わせ対応とナレッジの管理が別々の作業として切り離されている場合、現場ではナレッジの登録や更新が後回しになりがちです。業務フローに組み込まれていないとナレッジ管理の継続が難しくなります。

システムは導入したが、使いにくい

専用システムを導入しても、ナレッジの管理と日々の応対業務が連動していないと、現場での運用は定着しません。結果としてシステムを導入したが、ナレッジの活用に至らないケースが生じてしまいます。

ナレッジマネジメントが失敗する原因のまとめ

多くの失敗事例に共通するのは、現場業務とナレッジ管理が別々の業務フローとして設計されている点です。ナレッジ管理が現場業務フローの中に自然に組み込まれていなければ、継続的に活用する仕組みにはなりません。

ナレッジマネジメント成功のポイントは運用設計にある

ナレッジマネジメントを定着させるには、運用ルールの整備が欠かせません。ただし、ルールを定めるだけではナレッジが現場で継続的に登録・更新・活用される仕組みにはなりにくいため、以下の流れに沿って運用設計全体を整理することが重要です。

1|目的設定

まず明確にすべきなのは、ナレッジの目的です。応対品質の均一化なのか、新人育成の効率化なのかによって、必要な情報や粒度は異なります。目的が曖昧なままでは、ナレッジが増えても活用されにくくなります。

2|権限・ルール設計


誰が作成・更新し、誰が承認するのかといった権限設計も重要です。自由度が高すぎると品質がばらつき、厳しすぎると更新が滞ります。現場負荷と品質担保のバランスを取ったルール設計が求められます。

3|更新・棚卸し

ナレッジは時間とともに陳腐化します。定期的な棚卸しや見直しの機会を設けることで、内容の正確性を保ちやすくなります。更新を個人任せにせず、仕組みとして組み込むことがポイントです。

 

ただし、運用だけで支え続けるには現場の負荷が大きくなりがちです。運用設計を整えたとしても、ナレッジ更新作業が人手に依存している限り、忙しい現場では作業が後回しになり、結果として更新が滞りやすくなります。人の入れ替わりや業務量の変動によって運用が形骸化するという問題も生じます。

 

こうした問題を解決できる鍵となるのが、業務フローの中にナレッジ管理を自然に組み込む「システム連携」です。次章では、その考え方と具体的な活用イメージを整理します。

各種システム連携によるナレッジマネジメントの有効性

ナレッジは、システム単体で管理するだけでは使われ続ける仕組みになりにくいのが実情です。日々の応対業務で使われるシステム同士を連携させることで、ナレッジは初めて業務フローの中に組み込まれ、継続的に活用・更新されやすくなります。

 

【主なシステム連携の例】

  • CRM連携

CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客情報や行動履歴を管理し、顧客との良好な関係を構築・促進するための戦略やシステムの総称です。

CRM(システム)とナレッジを連携させることで、顧客情報や過去の対応履歴に応じたナレッジを参照しやすくなります。顧客の状況を踏まえた案内が可能となり、確認作業の削減や応対品質の安定につながります。

 

CRMの概要や導入効果について、詳しくは「コールセンター/コンタクトセンターにおけるCRM導入の効果と成功のポイント ― 顧客体験を高める仕組みとは」をご覧ください。

 

  • CTI

CTI(Computer Telephony Integration)は電話・FAXとコンピュータシステムを統合することです。 

CTIによって、着信と同時に問い合わせ内容に関連するナレッジをオペレーターのPC画面に表示できます。通話中にナレッジを検索する回数が減り、保留や転送の発生を抑えやすくなる点が特徴です。

 

  • IVR/チャットボット連携

IVR(Interactive Voice Response:電話の自動音声応答システム)やチャットボットとナレッジを連携させることで、回答の元となる情報を一元管理できます。有人対応と自動応答が同じナレッジに基づいて応対するため、応対内容のばらつきを防ぎ、顧客体験に一貫性を持たせやすくなります。


チャットボットを導入することの効果について、詳しくは「チャットボットはDX推進の第一歩――コールセンターの課題解決から始める、現場起点の業務デジタル化ガイド」をご覧ください。

 

  • 音声認識・通話要約システムとの連携

音声認識や通話要約システムを活用すれば、通話内容を自動的に記録・蓄積できます。オペレーターの手作業に頼らず、日々の応対から暗黙知を形式知へ変換する流れを作ることが可能です。

 

これらの連携は後から追加しようとすると、システムの追加改修やプロジェクト計画の大幅な見直しが必要となるうえ、場合によってはシステム間の連携自体ができない可能性も生じます。そのため、最初からシステム連携を前提にした基盤設計を行うことが、ナレッジ運用を現場に定着させるうえで重要です。

岩崎通信機が支援できること

  • 連携を前提にした全体アーキテクチャ設計

CRM、CTI、IVR、チャットボット、音声認識などを個別最適で導入すると、後から連携しようとした際に再設計が必要になるケースは少なくありません。岩崎通信機では、将来的な連携や拡張を見据え、データと業務フローの一貫性を重視した全体アーキテクチャ設計を行います。

 

  • 既存システムを活かした現実的な基盤構築

すべてのシステムを刷新するのではなく、既存のCRMやPBX、コールセンター基盤を前提とした段階的な統合・拡張にも対応します。現場・情報システム部門・経営それぞれの要件を整理し、無理のない形での基盤構築を支援します。

*PBX(Private Branch eXchange):企業や組織内の構内電話交換機のこと。複数の電話機を接続し、外線(公衆電話網)と内線(社内電話)の発着信や転送、内線同士の通話を制御するシステム。

 

  • ナレッジが自然に蓄積・更新される仕組みづくり

通話ログや問い合わせ履歴を活用し、オペレーターの手作業に依存しないナレッジ更新の導線を設計します。SECIやKCSといった考え方を、実運用で回る仕組みとして落とし込む点が特徴です。

 

  • 将来の拡張・改善を前提にした基盤づくり

新たなチャネル追加やAI活用、KPIや分析軸の変化にも耐えられる拡張性を重視しています。作って終わりではなく、改善を続けられる基盤づくりを前提に、長期的なコールセンター運営を支援します。

 

岩崎通信機のシステム構築支援の詳細については、サービスページ「コンタクトセンター構築」をご覧ください。

まとめ

ナレッジマネジメントは、情報を整理・蓄積すること自体が目的ではありません。コールセンターにおいては、ナレッジが日々の応対業務の中で使われ、更新され、蓄積されてこそ価値を発揮します。

しかし、運用ルールや現場の努力だけに依存した仕組みでは、忙しさや人の入れ替わりによって形骸化しやすいのが実情です。ナレッジを定着させるためには、業務フローに自然に組み込まれ、CRMやCTIなどのシステムと連携した設計が欠かせません。

システム導入をゴールとするのではなく、将来の拡張や改善まで見据えた基盤づくりこそが、応対品質と生産性を安定的に支えるポイントとなります。岩崎通信機は、ナレッジ活用を前提とした全体設計から構築・拡張までを一貫して支援します。

 

ナレッジを“使われ続ける資産”へ — 音声認識によるVOC活用実践ガイド

ナレッジマネジメントを定着させるためには、運用ルールだけでなく、日々の応対から知識を蓄積・更新できる仕組みづくりが欠かせません。

しかし、通話内容が十分に活用されていない状態では、ナレッジ更新が属人化し、改善が止まってしまうケースも少なくありません。

そこで、音声認識を活用してVOCを可視化し、ナレッジ活用や業務改善につなげた大手企業の事例をまとめたホワイトペーパーを、無料でご覧いただけます。

thumbnail_utilize_voc

 

この記事を書いた人

 

 

藤井直樹

コールセンター業界で20年以上SEとして従事。
アナログ時代から今に至るまで現場に近い場所で技術の移り変わりを経験。
公共、金融業界、BPO業界の経験が豊富。

あわせて読みたいコラム

問い合わせ対応を効率化する方法とは?「仕組み」から考える改善の進め方

問い合わせ対応を効率化する方法とは?「仕組み」から考える改善の進め方

#knowledge

icon詳しく見る

ACW(後処理時間)を短縮するには?長引く原因・改善策を解説

ACW(後処理時間)を短縮するには?長引く原因・改善策を解説

#knowledge

icon詳しく見る

コールセンターのATT(平均通話時間)の基礎知識&改善方法を紹介

コールセンターのATT(平均通話時間)の基礎知識&改善方法を紹介

#knowledge

icon詳しく見る