knowledge
人手不足や応答率の低下、チャネル多様化によるオペレーションの複雑化——。
こうした課題を抱えるコールセンター/コンタクトセンターでは、AIを活用した業務効率化と品質向上が急務となっています。
本記事では、AI導入の目的や効果、活用できる領域、そして成果を生み出すためのシステム構築のポイントを体系的に解説します。
なぜコールセンター/コンタクトセンターにAIが必要なのか
人手不足や顧客ニーズの高度化など、コンタクトセンターを取り巻く環境は急速に変化しています。
こうした環境の変化に対応しながら生産性と品質の両立を実現する手段として、AIの活用が注目されています。
人手不足でも顧客ニーズの高度化に対応するため
顧客はスピーディかつ的確な対応を求めます。一方で働き手の不足によりオペレーターの確保は難しく、応答率や対応品質の低下が深刻化しています。その解決策として、AI活用によって業務の自動化を行い、少ない人員で現場を回すことの重要性が増してきました。
複雑化したオペレーションの支援として
電話・メール・チャット・SNSなど、顧客との接点は年々多様化し、オムニチャネル化が進んでいます。その一方で、チャネルごとに異なるシステムを併用するケースも多く、情報が分断され、オペレーションの複雑化が進行しています。
こうした環境下でAIは、チャネル横断での情報整理や自動応答、問い合わせ内容の振り分けなどを通じてオムニチャネルへの対応を支援。結果的に、現場の負荷を軽減しながら、よりスムーズで一貫した顧客体験の実現に貢献します。
コンタクトセンターのオムニチャネル化の進め方について、詳しくは「オムニチャネル化とは?理想論では終わらせない。オムニチャネル化を現実にする段階的導入の進め方」をご覧ください。
省人化ではなく「生産性と品質の両立」の手段として
AIは単なる人員削減のための仕組みではありません。定型業務を自動化することでオペレーターが付加価値の高い業務に集中でき、対応効率と顧客満足度の双方を高めることができます。
AI活用の目的と導入で得られる効果
AIを導入する目的は多岐にわたりますが、大きく整理すると「現場」「顧客」「経営」の3つのレイヤーに整理できます。各レイヤーでAIが果たす役割を理解することで、導入効果を正しく評価しやすくなります。
目的①【現場】負担・コストを減らして業務効率化
定型業務やFAQ対応を自動化し、オペレーターの負担を軽減。教育・引き継ぎの工数削減や応答時間の短縮など、コスト削減に直結する効果が期待できます。
活用するAIとしては、チャットボットやボイスボット、IVRなど、一次対応を担うAIが代表的です。
目的②【顧客】対応品質を安定化し、顧客体験を向上
AIがオペレーターをリアルタイムで支援するため、誰でも一定品質の応対を実現。音声認識によるFAQ推薦や要約・回答文の自動生成、感情検知による最適化などが活用されています。
対応品質のばらつきを抑え、顧客満足度(CS)の安定化につながります。
目的③【経営】データ活用により、組織運営を強化
通話ログや応答履歴、VOC(顧客の声)をAIが分析することで、改善につなげやすくなります。
顧客の声を経営判断や商品企画に活かしやすくなることで、コンタクトセンターが価値創出の起点に変わるでしょう。
入電予測やシフト最適化、品質監査など、運営の精度向上にも貢献します。
これらの目的を実現するために、AIは具体的にどのような業務領域で活用されているのでしょうか。次の章で代表的な5つの領域を紹介します。
コンタクトセンターでAIを活用しやすい5つの領域
AIが成果を発揮するかどうかは、“どこに組み込むか”によって大きく変わります。ここでは、実際のコンタクトセンターで活用が進む代表的な5つの領域と、活用例を紹介します。
1. 自動応答・一次対応の効率化
チャットボットやボイスボットがFAQ対応や自動ルーティングを担い、入電対応を効率化。AI IVRを組み合わせることで24時間対応やピーク時の負荷分散も可能になります。
チャットボット活用のメリットを詳しく知りたい方は「チャットボットはDX推進の第一歩――コールセンターの課題解決から始める、現場起点の業務デジタル化ガイド」をご覧ください。
2. オペレーター支援・対応品質の向上
音声認識によるFAQ推薦やスクリプト提示などを取り入れることで、誰でも一定品質の応対を実現。教育・育成コストの削減にもつながり、対応品質の平準化を支えます。
音声認識でできることを確認したい方は「AI・高度化支援ソリューション」のページをご覧ください。
3. 顧客理解とデータ活用
チャットの応対ログや音声データをAIが分析することで、顧客の感情や要望を可視化。VOC分析の結果をマーケティングや商品改善へ反映し、より深い顧客理解を促します。
AIとCRMを連携させ、応対ログを自動的に記録・一元管理することも可能です。CRMでできることについて詳しく知りたい方は「コールセンター/コンタクトセンターにおけるCRM導入の効果と成功のポイント ― 顧客体験を高める仕組みとは」をご覧ください。
4. センター運営・人員配置の最適化
入電予測AIが問い合わせの波を分析し、シフトやリソースを最適化。クラウドPBXやWFM(ワークフォースマネジメント)と連携することで、応答率と稼働効率を両立します。
クラウドPBXが解決できる課題については「クラウドPBXで進めるコンタクトセンターのクラウド化――仕組み・メリット・導入ステップと現場課題の解決法を徹底解説」をご覧ください。
5. セキュリティ・品質監査の高度化
通話内容やログをAIが自動監査し、PII(個人情報)の検出や情報漏えいを防止。セキュリティを担保しながら、運用効率と品質維持を両立させます。
AI活用を成功に導くシステム構築のポイント【3つ】
AIを活かすシステムは「初期段階で完成」するものではなく、PoC(実証)を繰り返しながら最適化していくものです。
センター業務は運用状況に左右されやすいため、段階的に実証を重ねることで精度を高めるアプローチが有効です。こうした背景を踏まえ、システム構築をする際に重要となるポイントが以下の3つです。
1. 拡張性
将来的なチャネル追加や生成AI対応にも柔軟に対応できる、疎結合な構成設計が重要です。AI技術の進化に合わせて機能を拡張できる仕組みが、長期的な運用コストを抑える鍵となります。
2. 連携性
CRMやクラウドPBX、FAQシステムなど異なるプラットフォームをデータ連携させることで、AIが最大限に機能します。
システム間をシームレスにつなぐ設計により、現場の運用効率と顧客対応品質を両立できます。
3. セキュリティ
通話データや個人情報を扱うセンターでは、AI導入時の権限管理や暗号化、監査体制の整備が欠かせません。
セキュリティを確保しながら利便性を損なわない設計が、安心してAIを活用する前提となります。
拡張性・連携性・セキュリティを備えたコールセンター/コンタクトセンターのシステム構築の進め方については「コールセンター/コンタクトセンターのシステム再構築|運用される設計で失敗を防ぐ」をご覧ください。
まとめ:AI活用の鍵は「拡張性×安全性」の両立
AIは“人を置き換える”ための技術ではなく、“人がより価値を発揮できる環境をつくる”ための基盤です。
業務の効率化や品質向上、データ活用を通じて、コンタクトセンターの役割は「顧客接点」から「企業価値を高める拠点」へと進化していきます。
岩崎通信機は一気通貫でAI活用を支援
AI活用を実現するには、信頼できる技術基盤と実装力が欠かせません。岩崎通信機は、通信技術・CRM・AIを一気通貫で設計できる強みを活かし、現場の運用改善を起点に、中長期の組織運営まで見据えたシステム構築を支援します。
単なるツールの導入にとどまらず、“人とAIが協働して成果を生み出すコンタクトセンター”の実現をサポートします。
また、クラウドPBXからCRM、AIまでを包括的に設計・実装できる技術力を軸に、現場主導のエンジニアリングでPoCから段階的スケールへと確実に動くシステムを構築。
導入後も安心してご利用いただけるよう、運用面のサポートやセキュリティ面のフォローも行い、スムーズな運用定着をご支援します。
詳しくは、岩崎通信機の「AI・高度化支援ソリューション」のページをご覧ください。
この記事を書いた人
藤井直樹
コールセンター業界で20年以上SEとして従事。
アナログ時代から今に至るまで現場に近い場所で技術の移り変わりを経験。
公共、金融業界、BPO業界の経験が豊富。