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コールセンターやコンタクトセンターでは、PBX・CRM・各種AIなど複数システムを連携させながら運用するケースが一般的です。
しかし、設計や運用が分断されたまま構築を進めると、「導入したのに使われない」「変更が難しく運用が止まる」といった課題を招きかねません。システム構築で成果を出すために重要なのは、導入そのものではなく“運用され続ける設計”を実現することです。
本記事では、コールセンター/コンタクトセンターのシステム構築が難しい理由から、成功するための設計ポイント、PoCの進め方、そして導入後の改善プロセスまでを解説します。
コールセンター/コンタクトセンターのシステム構築が難しい理由
コールセンターやコンタクトセンターのシステム構築では、PBX・CRM・FAQ・チャット・AIなど複数システムを連携させる複雑さが常に課題となります。個別最適で導入されたシステムをつなぎ込む過程で整合性が崩れると、障害対応やデータ不整合といった運用トラブルが発生しやすくなってしまいます。
近年では、セキュリティ要件や個人情報保護対策の強化も構築の難易度を高める理由に。アクセス制御や暗号化、クラウド設定などを後付けで対応しようとすると、変更や保守のたびに大きな負担が発生し、運用の柔軟性を損なうリスクがあります。
さらに、現場の実務を十分に想定しないまま設計を進めてしまうことも、構築が失敗する大きな要因です。利用者の操作性や運用フローを踏まえない設計では、導入後に「使われない」「属人化する」といった問題が生じ、システムが定着しません。
成功するシステム構築の第一歩は“運用される設計”
コールセンターやコンタクトセンターのシステム構築で重要なのは、導入そのものをゴールとしないことです。真に成功するシステムとは、導入後も現場で活用され続け、改善を重ねながら成果を出し続ける仕組みを指します。そのためには、単に要件を満たす機能を整えるだけでなく、「運用される設計」を前提に考えることが欠かせません。
運用される設計
利用者(オペレーター)・運用者(SV)・管理者(情報システム担当など)の行動や判断プロセスを設計段階から想定し、現場の実務に即した仕組みを構築する考え方
要件定義の時点で「誰が」「どんな環境で」「どのように使うのか」を明確にし、実際の業務フローに沿って構築を進めることが、“止まらないシステム”を実現する第一歩となります。
例えば、オペレーターが1日に何件の応対を行い、どの画面でどんな操作をするのか。SVがどのようにモニタリングや教育を行うのか。管理者がシステム変更やログ監査をどの頻度で実施するのか――。こうした具体的な利用シーンを設計段階で洗い出すことが、運用定着の成否を分けます。
コールセンター/コンタクトセンターのシステム構築で押さえたい3つのポイント
成果を生み出すシステムの共通点は、「運用で止まらない」「将来も育てられる」ことです。これらを実現するために、以下3つの設計ポイントを押さえておく必要があります。
1. 現場最適化 ― 操作性と権限設計の工夫
オペレーターやSV、管理者など、利用者の立場によって求められる操作性は異なります。たとえば、オペレーターにとっては応答効率を高めるUI/UXが、管理者にとっては正確なログ監視や設定変更のしやすさが重要です。
各利用者の業務に合わせて画面設計や権限を最適化することで、日々の運用負荷を軽減し、定着率を高めることができます。
2. 柔軟なアーキテクチャ ― 将来の拡張性を見据える
コールセンター/コンタクトセンターの業務は、顧客接点の多様化やAI技術の進化とともに変化を続けています。そのため、システム構築時から拡張や連携を前提とした設計を行うことが欠かせません。
API連携やマイクロサービス構成など、疎結合なアーキテクチャを採用することで、将来的な機能追加や外部システム接続、AI導入にも柔軟に対応できる基盤を整えられます。
コールセンター/コンタクトセンターのAI活用のポイントについては「コールセンター/コンタクトセンターのAI活用術|拡張性・セキュリティ設計が成功の鍵」をご覧ください。
3. 安定稼働のための設計 ― 障害対応・バックアップ・監視体制の確立
コールセンターでは、システムが一時でも停止すれば顧客対応に直結する重大なリスクとなります。
そのため、障害時の復旧手順・データバックアップ・監視体制を初期段階から組み込み、万一のトラブルでも迅速に復旧できる設計を整えておくことが重要です。
特にクラウド化が進む現在では、アクセス制御や可用性設計を含むセキュリティ面での考慮も欠かせません。
これらの3つの要素を意識した設計は、単なる“導入して終わり”のシステムから、「成果を出し続けるシステム」への転換を実現します。
PoCで“使われないシステム”を防ぐ|現場と一体で進める検証プロセス
大規模なシステムの構築では、PoC(Proof of Concept:概念実証)を通じて段階的に検証を行うことが欠かせません。PoCを実施する目的は、単に技術的な実現可否を確認することではなく、“現場で本当に動くか”を確かめることにあります。
技術面のテストにとどまらず、オペレーターやSVが実際に操作する画面・応答フローなど、実運用を想定した検証を行うことが重要です。
たとえば音声認識やFAQ自動化など、AIを含む新機能を導入する場合、応答遅延や誤認識などのリスクを事前に洗い出し、現場のフィードバックを反映して改修するサイクルをPoC段階で確立します。
このように、開発側と現場が一体となって進める検証プロセスを設けることで、システム導入後に「使われない」「現場が混乱する」といったトラブルを未然に防ぐことができます。
セキュリティを設計に組み込む|安全で止まらない運用のために
コールセンターやコンタクトセンターでは、顧客情報や通話データなど機密性の高い情報を日常的に扱います。そのため、システムの安全性はもちろん、運用を止めないための「セキュリティ設計」が欠かせません。
セキュリティ対策は、構築後に個別で追加するのではなく、設計段階から組み込むことが基本です。アクセス制御・暗号化・ログ管理・ネットワーク分離・クラウド環境の設定などを後付けで対応しようとすると、改修コストが膨らむだけでなく、障害リスクや運用負荷の増大につながります。
特にクラウド化が進む現在では、利便性と安全性をいかに両立させるかが重要なテーマです。
たとえば、在宅勤務環境を整えながらも、通信経路の暗号化や多要素認証を組み合わせることで、セキュリティレベルを維持しつつ、業務効率を損なわない運用を実現できます。
また、システム稼働後も定期的な監査や脆弱性診断を実施し、運用ログを活用した継続的な改善を行うことが求められます。これにより、単なる「安全なシステム」ではなく、長期的に止まらず、信頼されるシステムへと成長させることができます。
セキュリティ対策について詳しくは「コールセンター/コンタクトセンターのセキュリティ対策 ― ゼロトラストで備えるAI・クラウド・在宅時代のリスク」をご覧ください。
導入後を見据えた“改善型システム構築”への転換
コールセンターやコンタクトセンターのシステムは、“導入して終わり”ではありません。システム構築で成功する企業は、PoC(概念実証)や段階的な導入を通して「現場で動かせるシステム」を構築しています。開発サイドの設計思想だけでなく、利用者の操作性や運用負荷を検証しながら改善を続けることで、現場が本当に使える仕組みへと成熟させているのです。
その実現には、データ分析や運用ログの活用が欠かせません。これらのデータをもとに課題を“見える化”することで、改善の優先順位を定量的に判断できるようになります。応答ログや操作履歴を分析し、UIや業務フローを継続的に見直すことで、運用品質と業務効率の双方を高めることができます。こうした改善サイクルを定常化することが、長期的なシステム定着と成果創出につながります。
岩崎通信機は、PoC → 構築 → 運用改善の各フェーズを一貫して支援し、現場の実態に即した改善を重ねながら“止まらないコールセンター/コンタクトセンター”の実現を支援します。
詳しくは、岩崎通信機の「コンタクトセンター構築サービス」をご覧ください。
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この記事を書いた人
藤井直樹
コールセンター業界で20年以上SEとして従事。
アナログ時代から今に至るまで現場に近い場所で技術の移り変わりを経験。
公共、金融業界、BPO業界の経験が豊富。