チャットボットはDX推進の第一歩――コールセンターの課題解決から始める、現場起点の業務デジタル化ガイド
チャットボットはDX推進の第一歩――コールセンターの課題解決から始める、現場起点の業務デジタル化ガイド

チャットボットはDX推進の第一歩

コールセンター業務における人手不足や応対品質のばらつき、顧客満足度の低下。これらの課題に直面する企業にとって、チャットボット導入はDX(業務改革)への第一歩となります。
単なる自動応答の仕組みにとどまらず、現場の課題に向き合い、効率化・品質の安定、データ活用など多方面で効果を発揮する「業務変革の入り口」として注目されています。
この記事では、チャットボット導入の背景や得られる効果、よくある失敗とその対策、導入ステップ、さらには業務全体の見直しに必要な視点や、岩崎通信機が提供できる支援の内容まで、わかりやすく解説します。

なぜ今、コールセンターにチャットボットが必要なのか?

深刻化する人材課題と属人化リスク

コールセンターでは、慢性的な人手不足や高い離職率により、応対人員の確保が難しくなっています。新人教育やOJTにも多大な時間とコストがかかるため、応対品質が安定せず、顧客対応にばらつきが出てしまうケースも少なくありません。

 

顧客満足度(CS)の低下
「つながらない」「回答が曖昧」「何度も同じ説明を求められる」──こうした不満は顧客体験を損ね、企業ブランドの毀損にもつながります。ナレッジの整備や仕組み化が不十分なままでは、オペレーターの対応に依存せざるを得ず、属人化から抜け出せない状態に陥ります。

 

DX文脈での3段階の進化

  • デジタイゼーション(例:通話録音、録音のテキスト化)
  • デジタライゼーション(例:チャットボット、FAQシステム)
  • デジタルトランスフォーメーション(例:問い合わせ対応の統合自動化)

チャットボットはこの中でも、デジタライゼーションの中核となる技術です。現場の負荷軽減、顧客対応の効率化を両立しながら、将来的なCRM連携・データ活用にもつながる、“スモールスタート型DX”の入り口として非常に有効です。

コールセンター業務におけるチャットボット導入の効果とは?

一次対応の自動化による負荷軽減
「営業時間外の問い合わせ対応」「よくある質問(FAQ)」など、定型的なやり取りをチャットボットが担うことで、オペレーターの稼働時間を大幅に削減できます。

 

応対品質の均一化
ナレッジベースやFAQと連携することで、誰が対応しても同じ回答が返せる体制を構築可能です。オペレーターの経験値に頼らない、安定した応対が実現します。

 

顧客利便性の向上
24時間対応やスマートフォンからの即時応答が可能となり、顧客の「すぐ知りたい」というニーズに応えられる環境を提供できます。顧客体験(CX)の向上にも直結します。

 

応対ログの蓄積と活用

チャットボットとのやり取りはすべてログとして蓄積できるため、VOC(Voice of Customer)分析や業務改善の材料として活用できます。リアルタイムでの課題抽出やニーズ発見にも役立ちます。

チャットボット導入でよくある失敗とその原因【事前に防ぐには?】

チャットボット導入は、単なるシステム導入ではなく「業務プロセスの見直し」そのものです。
しかし、設計や運用における準備不足によって「うまく活用できない」「結局使われなくなった」といった事例も少なくありません。ここでは、チャットボット導入時によくある失敗とその原因をご紹介します。

1. 顧客のニーズに合っていない設計

顧客が本当に知りたい情報や行動パターンを把握しないまま、企業都合でチャットボットを設計してしまうと、「使いにくい」「目的の情報にたどり着けない」といった状況が生まれます。
過去のチャットログやFAQのアクセス履歴を分析し、よくある質問や言い回しを抽出。ペルソナ設計を踏まえた対話シナリオの設計やユーザーテストも実施し、実運用で“ちゃんと使える設計”を実現させることが重要です。

2. オペレーターとの連携が不十分

チャットボットで完結しないケースで有人対応へうまく切り替わらないと、逆に不満が増える原因になります。
キーワードによる自動エスカレーションや、チャットボットからオペレーターへのスムーズな引き継ぎ設計(通知・履歴共有など)を行い、“チャットボットと人の連携”を設計から考える必要があります。

3. 改善・運用体制が整っていない

導入後に「分析や改善が行われず、次第に使われなくなった」という声も少なくありません。
岩崎通信機は、ログ分析・KPIモニタリング・フィードバック設計まで、継続的な運用改善を見据えた支援を行っています。単なる導入支援ではなく、長期的なパートナーとしての体制を整えています。

チャットボット導入のステップと注意点【準備〜設計〜導入】

チャットボット導入で成果を出すには、「導入を目的化しない」ことが重要です。以下のようなステップで設計から運用を見据えて導入を進めていきましょう。

 

ステップ1:業務課題の整理

  • 何を自動化したいのか(FAQ/予約/再配達など)
  • どの業務でチャットボット導入のROIが最も高いか

現場ヒアリングなどを通じて、「現場が困っていること」と「顧客が困っていること」の両方を洗い出しましょう。

 

ステップ2:FAQ整備と分類

  • 社内に点在するFAQを一元化・再構成
  • 顧客視点で分類し直し、検索や導線を最適化

既存のFAQ文書は多くの場合「社内都合」で分類されています。チャットボットは“顧客都合の視点”で設計すべきです。

 

ステップ3:チャットボット設計(シナリオ/AI型)

  • 分岐型シナリオか、AI型かを判断
  • スムーズな手動切り替えや「オペレーターに代わる」導線設計も重要

中途半端なチャット設計は「使われないボット」を生む原因になります。

 

ステップ4:UI/導線設計

  • チャット開始ボタンの位置/色/誘導文言の工夫
  • スマートフォン利用者にも配慮した配置と動線設計

「結局電話に戻ってくる」ようなUIは逆効果です。

チャットボット導入にあたり見直すべき業務フローとシステム連携とは?

チャットボットを導入する際に忘れてはならないのが、「既存業務との整合性」と「システム間連携の設計」です。チャットボットは単独で成果を出すものではなく、FAQ、CRM、電話応対、有人チャットなど、“業務全体の構造”の中で設計される必要があります。

 

どの業務を自動化するのかの切り分け

全ての業務にチャットボットを当てはめようとすると、かえって複雑になります。まずは「FAQ対応」「予約受付」「再配達手続き」など、自動化しやすい業務に絞ることで効果を実感しやすくなります。

 

人とボットの役割分担と情報連携の設計

有人チャット・電話窓口・FAQ・CRMなど、各チャネルが連携することで初めて、業務全体が最適化されます。たとえば、ボットで取得した内容をオペレーターに自動引き継ぎできれば、現場の手間も軽減できます。
岩崎通信機では、これらの情報設計をプロセス全体で捉え、「情報連携前提のチャットボット設計」を進めています。

 

拡張性を見据えたスモールスタート

「とりあえずFAQだけ自動化したい」というケースでも、将来的にCRMや音声システムとの連携ができる設計にしておけば、拡張コストも抑えられます。
岩崎通信機は、営業・SE・開発・保守までの一貫した体制を有しており、チャットボット単体ではなく業務全体の構造を見据えた業務改善と連携基盤の構築を行います。

 

オペレーション・マネジメントにも貢献

自己解決の促進やチャネル拡充だけでなく、応対履歴の自動記録、音声認識による評価の自動化、NGワードの検知など、マネジメント領域への拡張も可能です。
コールセンター全体の負荷を下げつつ、業務品質の底上げも狙える。それが、業務プロセス起点で設計されたチャットボットの強みです。

コールセンターにおけるチャットボット導入事例のご紹介

事例①:通信サービス企業 席数:300席

コールセンターへの入電数が多く、対応遅延やフリーダイヤルの通信費増大が課題となっていました。そこで、岩崎通信機は、問い合わせが集中する時期・内容に的を絞ってチャットボットを構築。
センター内に点在していたマニュアル類をFAQとして再構成し、外部FAQと連携。チャット上で記入例やリンクも提示できるように設計したことで、顧客の自己解決率が大きく向上。
結果として入電数が減少し、対応品質の向上とコスト削減を実現しました。

 

事例②:保険業界 席数:2000席

従来は紙や電話を中心とした各種手続きが主流で、顧客・オペレーター双方に負担がかかっていました。
岩崎通信機は、「LINE上で完結するチャットボット」によって、最低限の操作で手続きができるよう導線を設計。顧客の利便性が向上し、社内業務の効率化にも寄与しました。
導入後も閲覧数や選択状況などのログを分析し、改善施策を定期的に実施することで、定着と活用が進んでいます。

岩崎通信機が提供できるチャットボット導入支援とは?

チャットボットを「入れるだけ」で終わらせない。
岩崎通信機は、音声通信領域における長年の知見と、業務フロー全体を見渡した設計力を強みに、現場起点のチャットボット導入を支援しています。

私たちが大切にしているのは、「現場で実際に使われる仕組みであること」。
FAQ整備からシナリオ設計、UI導線、CRMや音声システムとの連携まで、幅広い支援メニューを一気通貫で提供しています。

主な支援内容

  • ヒアリングを通じた業務課題の可視化
  • FAQ/ナレッジベースの構造設計支援
  • UI・導線設計のアドバイス
  • CRM/FAQ/PBXなどとの連携設計・実装
  • 導入後のログ分析/改善PDCA体制の構築サポート

単なるツール導入にとどまらず、「業務全体の構造を変えていくための仕組みづくり」としてシステム開発のご支援をさせていただきます。
 ▶詳細はこちら

まとめ

チャットボットは、単に「効率化のためのツール」ではなく、業務全体を見直すきっかけにもなりうる存在です。
しかし、どんなに高機能でも現場に合わなければ使われず、業務も変わりません。

岩崎通信機は、音声・通信システムの開発現場で長年培った経験をもとに、業務の構造そのものを理解したうえで、チャットボットの設計・構築をご支援しています。
PoC(試験導入)やFit&Gap(現状と理想の差分整理)なども踏まえ、導入ありきではなく、「本当に業務が良くなるかどうか」を一緒に検証しながら、無理のないステップで設計をご提案します。

いきなり大規模な投資をする前に、今ある課題や業務の流れから整理してみませんか。まずはご相談からでもお気軽にお問い合わせください。

 

この記事を書いた人

 

藤井直樹

コールセンター業界で20年以上SEとして従事。
アナログ時代から今に至るまで現場に近い場所で技術の移り変わりを経験。
公共、金融業界、BPO業界の経験が豊富。

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