コールセンター/コンタクトセンターにおけるCRM導入の効果と成功のポイント ― 顧客体験を高める仕組みとは
コールセンター/コンタクトセンターにおけるCRM導入の効果と成功のポイント ― 顧客体験を高める仕組みとは

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コールセンターはもちろん、メール・チャット・SNSなど複数チャネルを扱うコンタクトセンターも、人材不足や応対品質のばらつき、在宅勤務の普及など、複合的な課題を抱えています。さらに、経営層からは効率化と顧客満足度向上の両立が求められています。

このような状況で注目されているのがCRM(顧客関係管理システム)です。CRMは単なる効率化ツールではなく、顧客応対を標準化し、企業全体の競争力を高める基盤となります。この記事では、CRM導入が求められる背景や実現できる効果、そして導入時に直面しやすい課題を整理します。

なぜ今、コールセンター/コンタクトセンターにCRMが必要なのか

コールセンター/コンタクトセンターは顧客接点の最前線であり、企業ブランドを左右する重要な部門です。しかし現場では次のような課題が顕在化しています。

  • 人材不足と離職率の高さ
    教育工数が増え、品質維持が難しくなる。
  • 在宅勤務者の増加
    応対品質をリモートで管理できず、ばらつきが拡大する。
  • 応対品質の属人化
    オペレーターごとのスキル差により顧客体験が統一されない。
  • 効率化とCXの両立
    コスト削減と顧客満足度向上を同時に求められる。

センター運用において、効率化への取り組みは欠かせません。しかし、自社の都合ばかりを優先すると、顧客が不便を感じて離脱したり、ブランド価値を損なうリスクがあります。

たとえば、電話窓口の自動化を進めすぎて「オペレーターにたどり着けない」と不満を持たれるケースは少なくありません。

大切なのは、顧客体験を守りつつ効率化を実現することです。

そこで注目されるのがCRM導入です。CRMは顧客情報や応対履歴を一元化し、誰が対応しても一定水準のサービスを提供できる仕組みを整えます。これにより現場の負担を軽減しつつ、顧客接点の質を高めることが可能になります。

つまりCRMは、単なるコスト削減の手段ではなく、顧客対応を通じて企業競争力を強化する基盤として、その価値が改めて評価されています

CRM導入で実現できること

  • 顧客情報の一元管理

顧客属性や問い合わせ履歴を統合し、FAQやナレッジ基盤とも連携できます。これにより情報の分散を防ぎ、検索や確認の手間を削減します。

  • 応対スピードと品質の向上

顧客情報を即時に参照できるため、初回解決率が向上します。FAQ検索の精度も高まり、オペレーターの負担軽減につながります。

  • 会話要約の自動登録

AIが会話を要約し、自動的にCRMに記録します。後処理時間を短縮すると同時に「顧客の生の声」を資産化できます。

  • オペレーター負担の軽減

CRMによって顧客情報やFAQが一元化され、複数画面を切り替える手間が減少します。応対や後処理がスムーズになり、業務ストレスが軽減。結果的に従業員の働きやすさが向上し、日常業務レベルでの定着率改善が期待できます。


CRM導入でよくある課題と解決策

既存システムとの連携不足

CRM導入で最も多い課題が、既存システムとの連携です。基幹システムやSFAと接続できないと情報が分散し、二重入力が発生します。

  • 事例
    国内製造業の数百席規模のコールセンターでは、CRM導入後も基幹システムと連携できず、オペレーターが複数画面を切り替えて作業する状況が続きました。その後、API連携を前提に設計を見直すことで応対時間が20%以上短縮され、現場の負担が大幅に軽減しました。

運用現場で活用が進まない

CRMは導入しても現場で使われなければ意味がありません。機能が多すぎたりUIが複雑だと、オペレーターが活用しきれず、教育コストだけが増加します。

  • 事例
    大手サービス企業の150席規模コンタクトセンターでは、高機能CRMを採用したものの操作の難しさから利用率が低迷。UIを業務フローに合わせてカスタマイズし、短期間で教育プログラムを整備した結果、導入から3ヶ月で利用率が8割を超えるまで改善しました。

将来の拡張性を軽視

導入当初は電話・メールの管理だけで十分でも、数年後にはチャットボットや音声認識AI、SNS対応などの拡張を検討するケースが増えています。このときCRMが拡張できないと再構築コストが発生します。

  • 事例
    地方拠点の数十席規模コンタクトセンターでは電話応対のみを前提にCRMを導入。
    しかし数年後にチャットボットを追加しようとした際に大規模改修が必要となり、想定外のコストが発生しました。初期段階から拡張性を考慮していれば、こうした追加投資は最小限で済んだはずです。

投資判断における社内の合意形成

「今でも業務は問題なく回っているのに、なぜCRMが必要なのか」という疑問は多くの企業で挙がります。現場が課題を感じていても、経営層から見ると「追加投資する理由」が見えにくく、導入が先送りされるケースは少なくありません。

  • 事例
    在宅勤務の増加により、応対品質のばらつきや処理時間の遅延が顕著になった通信業のコンタクトセンターでは、CRM導入によって応対ログの自動記録や会話要約機能を活用。後処理時間が30%短縮され、オペレーター負担が大幅に軽減されました。
    さらに、業務効率改善により離職率が10%下がり、採用・教育コストも削減。こうした成果を数値で示すことで、経営層の理解を得られ投資判断が進みました。

CRM導入で得られるメリット

CRMは単なる効率化ツールにとどまりません。導入によって得られる成果は、現場の生産性向上だけではなく、企業全体の競争力強化に直結します。主なポイントは以下のとおりです。

顧客満足度の向上

スピードと一貫性のある応対が実現すると、顧客は「自分のことを理解してくれている」という安心感を得られます。過去のやり取りや購入履歴を踏まえた提案や回答が可能になり、クレーム発生を防ぎやすくなります。その結果、解約率の低下やリピート率の向上につながり、長期的な顧客維持が可能になります。

組織全体の健全性向上

CRMは従業員の定着率改善や教育コスト削減といった効果をもたらし、組織運営の安定性を高めます。人材不足が深刻化する中で、働きやすい環境を提供することは採用コストの削減や長期的な人材育成にも直結します。単なる効率化ではなく、企業全体の健全な成長を支える仕組みとして価値を発揮します。

データ活用による全社最適化

CRMに蓄積された応対データや顧客の声は、営業やマーケティング、商品企画など全社で活用できる資産です。よくある問い合わせを基に商品改善につなげたり、顧客ごとの傾向を踏まえて営業提案をパーソナライズしたりと、組織全体の成果に直結します。単なる問い合わせ対応システムを超えて、企業全体の意思決定を支える情報基盤となります。

まとめ

コールセンター/コンタクトセンターにおけるCRM導入は、単なる業務効率化ではなく、顧客体験・従業員体験・経営リスク低減を同時に実現できる戦略的な投資です。顧客接点を一貫性あるものにし、解約率低下やブランド信頼性の向上につなげるだけでなく、従業員の定着率向上や人材育成コスト削減にも効果を発揮します。さらに、応対データを全社で活用することで、営業・マーケティング・商品開発など幅広い領域に効果をもたらします。

とはいえ、CRM導入には「既存システムとの連携」「現場での定着」「将来の拡張性」「セキュリティ要件」「経営層への合意形成」など、多くの障壁が存在します。企業ごとに抱える事情や優先度が異なるため、画一的な導入は難しく、自社に合わせた要件定義と社内説得のプロセスが不可欠です。

 

岩崎通信機が支援できること

CRM導入を成功させるには、既存環境との連携や運用フローの見直し、さらに将来を見据えた拡張性の確保が欠かせません。特に実装段階では「今の運用をそのままシステム化する」のではなく、将来のチャネル拡張やAI活用を前提とした設計が求められます。

岩崎通信機は、1990年代からコールセンター/コンタクトセンター向けシステムを提供してきました。

Genesys Cloud CXやAVAYAなど主要プラットフォームとの豊富な連携実績を持ち、FAQサイト連携やAIによる会話要約といった最新の取り組みにも対応しています。

要件整理から実装・運用まで、専門パートナーと連携しながら伴走支援を行います。

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この記事を書いた人

 

 

藤井直樹

コールセンター業界で20年以上SEとして従事。
アナログ時代から今に至るまで現場に近い場所で技術の移り変わりを経験。
公共、金融業界、BPO業界の経験が豊富。

 

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