CSATは、顧客対応の満足度を測る指標として、多くのコンタクトセンター・コールセンターで活用されています。CSATを計測・分析することで、顧客体験の改善点や、問い合わせ対応における課題を可視化することができます。
本記事では、CSATの基本的な考え方や計測方法、分析から見えてくる顧客ストレス、さらにシステム改善につなげるポイントまでを解説します。
CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度スコア)は、顧客が特定の体験や応対に対してどの程度満足したかを測る指標です。コンタクトセンターやコールセンターでは、主に「問い合わせ対応の満足度」を把握するために活用されます。
顧客対応の品質を改善するうえでは、ASA(平均応答時間)や応答率といった業務指標だけでなく、「顧客がどう感じたか」を把握することも重要です。CSATは、顧客体験を直接評価できる指標として、多くの企業で利用されています。
CSATを測る場合は、対応後のアンケートなどで「今回の対応にどの程度満足しましたか?」という質問を行うことが一般的です。
回答は5段階や7段階評価で取得されることが多く、一般的には「満足」「非常に満足」と回答した割合をCSATとして算出します。
【代表的な計算式】
CSAT= 「満足」「非常に満足」と回答した顧客数 ÷ 全回答数 × 100
たとえば、100人の回答のうち80人が「満足」か「非常に満足」と回答した場合、CSATは80%となります。
このように、CSATはシンプルな計算で把握できるため、日々の顧客対応の品質を継続的にモニタリングする指標として活用されています。
顧客体験を測る指標には、CSATのほかにもNPSやCESなどがあります。それぞれ測定する目的が異なるため、用途に応じて使い分けることが重要です。
NPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)
「このサービスを友人や同僚にどの程度すすめたいですか?」という質問を通じて、顧客ロイヤルティを測る指標です。ファンの割合やブランドへの信頼度を把握する際に活用できます。
CES(Customer Effort Score:顧客努力指標)
顧客が商品・サービスの利用や問題解決にどれだけ手間を感じたかを測る指標です。問い合わせ対応や手続きのスムーズさ、利用のしやすさを評価する際に用いられます。
CSATは個別の対応体験の満足度を測る指標であり、現場の応対品質を改善するための指標として活用されることが多いのが特徴です。
それぞれの役割は、次のように整理できます。
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NPS |
長期的なファンの割合・ブランド評価を知りたい場合 |
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CES |
手続きやサポートの“楽さ”を測りたい場合 |
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CSAT |
個別の顧客対応の品質を改善したい場合 |
中でもCSATは顧客対応の現場改善に活用される指標として、多くのコンタクトセンター・コールセンターで重視されています。
CSATによって顧客対応の満足度を可視化することで、サービスや運用改善につながるさまざまな効果が期待できます。ここでは、コンタクトセンター・コールセンターでCSATを活用することの代表的なメリットを紹介します。
CSATを継続的に計測すると、どのような問い合わせ対応で満足度が低下しているのかを把握しやすくなります。
たとえば、特定の問い合わせ内容や対応プロセスでCSATが低い傾向が見られる場合、その部分にサービス上の課題や業務フローの問題が潜んでいる可能性があります。こうしたデータをもとに原因を分析することで、改善すべきポイントを具体的に特定しやすくなります。
CSATの低下は、将来的な解約や利用停止の兆候として現れる場合もあります。特にBtoBサービスでは、サポート対応の品質が顧客継続率に影響するケースも少なくありません。CSATの結果を定期的にモニタリングすることで、満足度が低い顧客を早期に把握し、フォローや改善施策につなげることができます。
CSATは課題の発見だけでなく、満足度の高い対応事例を見つける際にも役立ちます。高い評価が得られた対応内容を分析することで、どのような説明や対応が顧客満足につながっているのかを把握できます。こうした優良事例を共有することで、オペレーター教育や対応品質の標準化に活かすことができます。
オペレーター教育にはナレッジマネジメントの考え方も重要です。詳しくは「コールセンターのナレッジマネジメントとは?成功のポイントを解説」をご覧ください。
CSATは対応直後にアンケートを実施できるため、顧客の評価を比較的短いサイクルで把握できる点が特徴です。
そのため、施策の実施前後で満足度の変化を確認しやすく、改善の効果を早い段階で検証しやすくなります。結果を数値として共有することで、現場でも改善の成果を把握しやすくなります。
BtoBサービスでは、サポートや保守対応の品質が顧客満足度や契約継続に影響することがあります。しかし、保守品質は感覚的に評価されることも多く、客観的に把握することが難しい場合もあります。
CSATを導入することで、サポート対応に対する顧客の評価を数値として蓄積できるようになります。これにより、保守サービスの品質を定量的に把握したり、改善施策の効果を検証したりする際の指標として活用できます。
CSATを計測する際は、目的や評価基準、アンケートの実施方法などをあらかじめ整理しておくことが重要です。
適切に計測することで、顧客満足度をより正確に把握し、サービス改善につなげやすくなります。ここでは、CSATを計測する際の基本的なポイントを紹介します。
CSATの計測を始める際は、まず「何を改善するために測定するのか」という目的を明確にすることが重要です。たとえば、オペレーターの応対品質を改善したいのか、サポート全体の顧客体験を把握したいのかによって、評価方法や指標の設定は変わります。
一般的なCSATのアンケートでは、満足度を5段階評価で取得するケースが多く見られます。評価結果をスコアとして扱う際には、「どの回答を満足とみなすのか」といった基準をあらかじめ定めておくことが必要です。たとえば5段階評価の場合、「非常に満足」「満足」を満足回答としてCSATを算出する方法や、回答に数値を割り当てて平均スコアとして評価する方法などがあります。
また、評価結果の扱い方を整理することも重要です。たとえば、満足回答の割合(CSAT%)を主要指標として追うのか、平均スコアを補助指標として併用するのかによって、分析の視点は変わります。
あわせて、自社の過去データや業界平均などを参考に、CSATの目標値(ベンチマーク)を設定しておくと、改善の進捗を判断しやすくなります。
CSATのアンケートは、顧客との接点に応じてさまざまな方法で実施できます。代表的な手段としては、以下のようなものがあります。
Webアンケート
チャット画面での評価
IVR(自動音声応答)アンケート
はがきやメールによるアンケート
それぞれの方法には特徴があり、回答率や回答のしやすさに違いがあります。
たとえば、電話対応の直後に実施するIVRアンケートは、顧客の記憶が新しいタイミングで回答を得られるため、リアルタイム性の高い評価を収集できる点が特徴です。一方で、回答操作の手間などから、顧客によっては回答しづらい場合もあります。
これに対して、WebアンケートはスマートフォンやPCから回答できるため、自由記述を含めた回答が得やすい傾向があります。ただし、顧客が後から回答する形式の場合、回答率が下がる可能性もあります。
このように、それぞれの手段の特徴を踏まえながら、問い合わせチャネルや顧客層に合った方法を選択することが重要です。
CSATを改善に活かすためには、スコアを確認するだけでなく、その背景を分析することが重要です。
CSATは数値として把握できる一方で、「なぜ満足度が高いのか、あるいは低いのか」といった理由までは把握できません。そのため、スコアの推移や問い合わせ内容、対応時間などのデータとあわせて分析することが有効です。
また、アンケートの自由記述コメント(フリーコメント)も重要な情報源となります。定量的なスコアだけでなく、顧客の具体的な意見や感想を確認することで、満足度の背景にある課題や評価ポイントをより深く理解できます。
このように、定量データと定性データを組み合わせて分析することが、CSATを実際のサービス改善につなげるためのポイントといえるでしょう。
CSATを継続的に計測し、アンケート結果や問い合わせデータを分析していくと、顧客満足度を下げてしまう要因が見えてきます。
コンタクトセンター・コールセンターの現場では、特に以下のような課題が顧客のストレスにつながりやすいとされています。
最も基本的なストレスの一つが、「問い合わせ窓口につながらない」ことです。電話が長時間つながらない、チャットの待ち時間が長いといった状況が続くと、顧客は問い合わせの前段階で不満を感じてしまいます。こうしたアクセス負荷は、繁忙時間帯の人員不足や問い合わせ集中などが原因となることがあります。
CSATの結果を時間帯やチャネル別に分析することで、満足度が低下しているタイミングや接点を把握しやすくなり、適切なリソース配分や問い合わせ導線の見直しにつなげることができます。
顧客にとって大きなストレスとなるのが、問い合わせの過程で同じ内容を何度も説明しなければならない状況です。
たとえば、別の担当者に引き継がれた際に再度状況説明を求められたり、チャネルをまたいだ問い合わせで過去の履歴が共有されていなかったりすると、顧客は「話が通じていない」と感じてしまいます。
こうした情報の断絶は、顧客管理システムや問い合わせ履歴の共有不足など、業務プロセスの課題が背景にある場合もあります。CSATのコメント分析などを通じて、顧客体験の断絶が発生しているポイントを把握することが重要です。
問い合わせがつながっても、問題解決までに時間がかかる場合、顧客満足度は低下しがちです。
たとえば、担当者が対応内容に十分慣れていない場合や、専門的な問い合わせに対して適切な担当者につながらない場合など、対応スキルと問い合わせ内容のミスマッチが発生すると、解決までに時間を要することがあります。
CSATの結果と問い合わせ内容をあわせて分析することで、どのような問い合わせで満足度が下がりやすいのかを把握できます。これにより、オペレーター教育やスキル分担の見直しなど、対応品質の改善につなげることが可能になります。
顧客の声を分析してサービス改善につなげる方法については「コールセンターのVOC分析方法|顧客満足度を高める分析の基盤とは」でもご紹介していますので、合わせてご覧ください。
CSATの結果や顧客コメントを分析すると、顧客満足度の低下につながっている構造的な要因が見えてきます。その原因はオペレーターの対応だけでなく、コンタクトセンター・コールセンターのシステム構成や運用設計に起因している場合もあります。
そのため、CSAT分析で見えた課題をもとに、システムや運用を見直すことで、顧客体験の改善につながるケースもあります。ここでは、代表的な課題と改善の考え方を紹介します。
顧客がオペレーターにつながるまでの待ち時間が長い場合、ACD(Automatic Call Distributor:着信呼自動分配装置)の設定や運用を見直すことで改善できる可能性があります。
たとえば、問い合わせ内容に応じて適切な担当者へ振り分ける「スキルベースルーティング」を導入することで、対応可能なオペレーターへ効率的に着信を配分できます。また、特定の時間帯に問い合わせが集中する場合には、あふれ呼(オーバーフロー)対策として別のチームへ振り分ける設定を行うことも有効です。
こうしたルーティングの最適化によって、待ち時間の短縮や対応効率の向上につながる可能性があります。
顧客が同じ説明を繰り返さなければならない状況は、顧客体験を損なう要因の一つです。こうした課題には、CTIとCRMの連携を強化することで対応できる場合があります。
たとえば、着信時に顧客情報や過去の問い合わせ履歴をオペレーターのPC画面に表示する着信ポップアップを活用することで、顧客の状況を素早く把握できるようになります。これにより、顧客に同じ説明を繰り返してもらう必要が減り、スムーズな対応につながります。
コンタクトセンターにおけるCRM活用については「コールセンター/コンタクトセンターにおけるCRM導入の効果と成功のポイント― 顧客体験を高める仕組みとは」をご覧ください。
IVRのメニュー構成が複雑な場合、顧客が目的の窓口にたどり着くまでに時間がかかることがあります。こうした状況は、顧客のストレスや満足度の低下につながる要因となります。
そのため、CSATの結果や問い合わせ内容を分析し、IVRの設計を見直すことも重要です。たとえば、メニューの階層を整理して選択肢を分かりやすくすることで、顧客が目的の窓口へスムーズに進めるようになります。
また、近年ではスマートフォンの画面上でメニューを選択できるビジュアルIVRへ誘導することで、より直感的に問い合わせ先を選べる仕組みを導入する企業も増えています。こうした工夫によって、顧客体験の向上につながる場合があります。
このように、コンタクトセンター・コールセンターの課題は、ACDやIVRの設計、顧客情報の連携など、システム構成や運用設計で改善できる場合もあります。岩崎通信機では、システムの構築・運用支援を通じて、問い合わせ導線や着信分配、顧客情報連携などの仕組みを見直し、顧客体験と現場業務の両面から改善を支援しています。CSAT分析などで見えてきた課題を踏まえ、運用に合ったシステム構成の検討を進めることも可能です。
岩崎通信機のシステム構築支援の詳細については、サービスページ「コンタクトセンター構築」をご覧ください。
コンタクトセンター・コールセンターのシステム改善は、顧客満足度の向上だけでなく、現場で働くオペレーターの負担軽減にもつながる場合があります。
たとえば、窓口につながりにくい状況や適切な担当者へ振り分けられないケースでは、顧客が不満やストレスを抱えた状態で対応が始まり、オペレーターの精神的負担も大きくなりがちです。
一方で、ACDによる適切な振り分けやIVRの設計見直し、顧客情報の共有などによって問い合わせ体験が改善されると、顧客の不満が高まる前に問題解決につなげやすくなります。その結果、過度なクレーム対応の発生を抑え、オペレーターが対応に集中しやすい環境づくりにもつながります。
こうした取り組みは、現場のストレス軽減だけでなく、離職率の低下や応対品質の向上といった好循環を生む可能性があります。
コンタクトセンターのシステム設計や再構築の考え方については「コールセンター/コンタクトセンターのシステム再構築|運用される設計で失敗を防ぐ」をご覧ください。
CSATは、顧客対応の評価指標として広く活用されていますが、その結果を分析すると、コンタクトセンター・コールセンターの運用やシステム構成に関する課題が見えてくる場合もあります。たとえば、窓口につながりにくい状況や情報共有の不足、問題解決までの時間の長さなどは、顧客の満足度に影響を与える要因となり得ます。
こうした結果を単なる評価として終わらせるのではなく、原因を分析し、運用やシステムの見直しにつなげていくことが重要です。CSATは顧客の声を数値として把握できる指標であると同時に、コンタクトセンター・コールセンターの仕組み全体を見直すための手がかりともいえます。
顧客体験の向上と現場の働きやすさの両方を実現するためにも、CSATの結果を継続的な改善活動に活かしていくことが求められます。